第33回研究大会(京都大学大会)によせて

日本教育技術学会 会長  向山 洋一

 

 国語の教科書を1ページほど読んだ後、教師が解説していくという授業があります。

 一言でいえば、「あたり前の言葉をあたり前の言葉に置きかえる作業」です。

 私は子供のころ、こうした授業が嫌いでした。退屈で退屈でしかたがありませんでした。

 なんでこんなことをするのだろうといつも不思議に思っていました。

 中学と高校で一人ずつ、一つの言葉に秘められた謎を解きあかしてくれる先生がいました。

 その時の全身を貫くような知的興奮 ─── 私が求めていたのはこれでした。

 誠実な先生が、真面目に、「あたり前の言葉をあたり前の言葉に置きかえる」授業をするほどに私は国語が嫌いになりました。それを救ってくれたのは、知的興奮をもたらしてくれた先生でした。

 だから、私は教師になってから、一度も「あたり前の言葉をあたり前におきかえる授業」をしたことがないと思います。一度もというのは、もしかしたら記憶ちがいかもしれませんが、教師人生で三度とはありません。

 では、私は国語の授業で何をしてきたのでしょうか。

 私は、日常生活の中で身につけることができないことを学ばせたかったのです。

 自然に放置していては、決してできないことを教育したかったのです。

 たとえば、文章を書く力です。これは自然に放置していては習得させることはできません。

 たとえば、ある言葉が指示する範囲です。こうした、言葉の厳密な使用方法も教育しなければ身につきません。

 たとえば、漢字を書くことです。

 日常生活の中で身につけていける「ことばのおきかえ」などはほどほどにして、その代わりに、しっかり教えなければ身につかないことを教えるべきなのです。

 令和2年4月から小学校で、令和3年4月から中学校で「新学習指導要領」が全面実施されます。

 「主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善」が大きなテーマのひとつになります。

 例えば、国語科では次のようなことが求められます。

 

  ① 単元など内容や時間のまとまりを通して

  ② 言葉による見方・考え方を働かせ、

  ③ 言語活動を通して、言葉の特徴や使い方などを理解し、

  ④ 自分の思いや考えを深める

 

 新学習指導要領では、具体的にどのような授業や指導法の工夫が求められているのか。

 そのために、どのような教育技術が必要なのかということを授業実践、子供の事実を通して提案していきます。

 今回の本学会が、今後の日本の教育の転機の一つとなり、具体的な授業実践を全国に発信する場としていきたいと思います。是非、先生方の現場での実践をご発表下さい。

会長 向山 洋一